屈みぎみの背中の向こうに手を伸ばし蛇口をひねれば、だばだばとシンクを鳴らしていた水流が止まる。のろのろと振り返った火村の顔には案じていたほど濃い影はない。ただ魂を奪われかけたかのように色のない表情をしていた。力のない視線が俺と蛇口のあいだを何度か往復し、やがて正気を取り戻す。 2014.11.16(Sun) 19:22 twlog_3k