つるまる、と。その唇が動いたのを確と見たはずだったのだ。その声に名を呼ばれるのが好きなのだと自覚してから、殊更に注意深く見つめてきた口元だ。勘違いとは思わなかった。だいたい他のどんな言葉も発せられなかったではないか。三日月の口からこぼれ落ちたのは、声ではなく琥珀色の珠だった。 2015.11.2(Mon) 21:19 twlog_3k